組織、組(くみ)、直(ちょく)など
教育期間も半ばになると、配属先の工場が発表されますが、この段階ではまだ自分の職場が決まっていません。工場に配属後、最終的に自分の持ち場になる職場が決まりますが、その所属する部署の事を、トヨタさんは「組(くみ)」と呼んでいます。「AB123」など、2桁の英字+3桁の数字が組み合わされたものが所属する組の名前(番号)です。慣れるまでは覚えにくいと思いますけど、配属後に書く書類には殆ど全て、自分の所属する組番号を書かないといけませんので、従業員証の裏にでもこっそりとメモしておくと、急な時に慌てなくて済むかも。
組の責任者の事をGL(じーえる・グループリーダーの略)と呼び、その下にEX(いーえっくす・エキスパート)さんなどのいわゆる職制さんがおり、一般の社員さん、同僚の期間従業員などが職制さんの統率のもと、自分の仕事に従事します。昔はGLのことを組長(くみちょう)と呼んでいたようですが、印象が悪かったのかして、今の呼称を使うようになったそうです。GLさんの上はCL(しーえる・チーフリーダーの略)がおり、同じ直の複数の組を統括しています。CLの上は課長さん(まず会う事はありません)ですので、一般的な通念では、CL=係長位になるんですかね。
一部の職場では三交代や常昼、昼夜二交代の勤務が行なわれていますが、殆どの場合は連続二交代で工場は稼働しています。つまり、あなたと全く同じ作業を(あなたが休んでいる間に)行なっている人達が居る訳で、そういった、同じ時間帯に働いている居る人達のグループを「直(ちょく)」と呼びます。日直や当直、宿直なんかで使われている直です。
連続二交代だと、「白直(しろちょく)」と「黄直(きいちょく)」の2色でトヨタさんは呼んでいるようです。入社時に貰うトヨタの年間カレンダーはこの白黄2色に1週間毎に色分けされている筈です。勤務時間については後述しますが、白直が1直の週は黄直が2直、白直が2直の週は黄直が1直の時間帯に勤務する事になります。
こうした白と黄色の関係を、自分の裏側の時間帯に働いている人達という意味で、「裏直(うらちょく)」とか、「裏番(うらばん)」っと呼ぶ事が一般的かな。裏直の期間従業員から作業の引き継ぎを直接やりとりする事は(殆どの職場で)無いと思いますけど、同じ作業を裏でやっている人ですから、詰所などで話す事があれば、仲良くやっておいて損は無いようにも思います。自分が2直の場合、ライン停止の回数なんかを交代時に聞いておくだけで、当日の自分の残業にある程度目処が立てられますし(笑)
勤務時間
期間工が配属される職場の勤務体系は 常昼、昼夜二交代、連続二交代、連続三交代などがあるようですが、殆ど全ての方が連続二交代勤務のライン作業現場に配属されます。
連続二交代とは、朝番(1直、いっちょく)と夜番(2直、にちょく)が1週間毎に入れ替わる勤務形態で、実労時間が7:35と上記勤務体系の中では一番短いです。日給は同じですので、それだけ連続二交代は仕事の内容がキツイって事なんですが(汗)
某工場 車体部・塗装成型部塗装課の場合(2直の開始時間は工場によって違うらしいです)
職場 体操 (無給) |
ミーティング |
ライン 作業 |
休憩 (無給) |
ライン 作業 |
昼休み (無給) |
ライン 作業 |
休憩 (無給) |
ライン 作業 |
残業 | 備考 | |
5分 | 5分 | 2時間 | 10分 | 2時間 | 45分 | 2時間 | 10分 | 1時間30分 | あったり なかったり |
||
一直 | 6:20 | 6:25 | 6:30 〜 8:30 |
8:30 〜 8:40 |
8:40 〜 10:40 |
10:40 〜 11:25 |
11:25 〜 13:25 |
13:25 〜 13:35 |
13:35 〜 15:05 |
15:05 〜 |
残業前の休憩無し |
二直 | 15:55 | 16:00 | 16:05 〜 18:05 |
18:05 〜 18:15 |
18:15 〜 20:15 |
20:15 〜 21:00 |
21:00 〜 23:00 |
23:00 〜 23:10 |
23:10 〜 24:40 |
24:40 〜 |
30分以上の残業時は定時に10分休憩がある(無給) |
出社後、職場の全員で音楽に合わせて職場体操(独自の体操をする職場も有り)をして、GLの話を聞いたあとに各自の持ち場に散り、チャイムと同時にラインが稼働、以下、2時間働いて10分休み、2時間働いて45分昼休み、2時間働いて10分休み、1時間30分働いて定時のチャイムって感じです。1直の残業は定時に休憩を入れずにそのまま最大60分ライン稼働する可能性があります。臨出の土曜日はもっと長くなる事もありますが)2直の残業は、30分以内で終わる残業なら定時の休憩無し、30分以上になる予定なら定時に10分間の休憩を取る事が多かったですが、この辺りの判断は職制さんに委ねられているようです。
また、同じ工場でも、配属部署が変われば時間割はこうなります。
某工場 組立部・塗装成型部(成型)・検査課の場合
職場 体操 (無給) |
ミーティング |
ライン 作業 |
休憩 (無給) |
ライン 作業 |
昼休み (無給) |
ライン 作業 |
休憩 (無給) |
ライン 作業 |
休憩 (無給) |
ライン 作業 |
残業 | 備考 | |
5分 | 5分 | 2時間 | 10分 | 2時間 | 45分 | 1時間 30分 |
10分 | 1時間 30分 |
10分 | 30分 | ほぼ 毎日 |
||
一直 | 6:20 | 6:25 | 6:30 〜 8:30 |
8:30 〜 8:40 |
8:40 〜 10:40 |
10:40 〜 11:25 |
11:25 〜 12:55 |
12:55 〜 13:05 |
13:05 〜 14:35 |
14:35 〜 14:45 |
14:45 〜 15:15 |
15:15 〜 |
残業前の休憩無し |
二直 | 15:55 | 16:00 | 16:05 〜 18:05 |
18:05 〜 18:15 |
18:15 〜 20:15 |
20:15 〜 21:00 |
21:00 〜 22:30 |
22:30 〜 22:40 |
22:40 〜 24:10 |
24:10 〜 24:20 |
24:20 〜 24:50 |
24:50 〜 |
残業前の休憩無し |
昼休みまでは車体や塗装系の職場と同じですが、昼休み後はライン作業が1時間30分単位になります。残業時は休憩無しでそのまま突入、2直の場合は残業が1時間(合計1時間30分連続作業)になったところで10分の休憩が入ります。組立の時間割が午後から1時間半区切りなのは、塗装と比べるとそれだけ体力的にキツイからです。
1日の仕事のリズム(2時間働いて10分休み…など)には比較的早く慣れると思いますが、週単位で勤務開始時間が変わる、連続二交代勤務の直の切り替えに慣れるにはかなりの時間が必要です。長く勤めている社員の方も1直2直を問わず「月曜日が一番辛い」と言う通り、休み明けで身体は比較的元気なんですが、生活のリズムが大きく切り替わるので、睡眠不足や、逆に過睡眠など、これをきっかけに風邪などをひいて体調を崩してしまう人も多いです。
実際の作業の内容は?
これはもう、配属先によって様々としか言い様がありません。下地の人はひたすら研摩、組立の人はひたすら部品の取り付けっと、約1分単位で同じ事を1日中繰り返します。精神的にも結構疲れます。
ある期間工(シーラー工程、左フロントドア担当)の場合
1.ボンネットに塗布済みのシーラーをヘラで仕上げる
2. エンジンルームに塗布済みのシーラーをヘラで仕上げる
3.フロントドアの内鈑合わせ目にシーラーを塗布
4. フロントドアの内鈑合わせ目のシーラーをヘラで仕上げる
5.フロントドアを閉め、スプリング治具で固定
6. 給油口に塗布済みのシーラーをヘラで仕上げる
7.給油口の蓋を治具に固定
8. バックドアに塗布済みのシーラーをヘラで仕上げる
1.に戻る
これの繰り返しが、毎日、毎週、毎月 …です。ま、タクトタイムが変ると若干の作業内容変更がありますけどね。
そうそう、エンジンパーツの製造とかは私には分かりませんが、塗装や組立のラインだと、いわゆるボディー(車の基本骨格)がコンベアに乗ってラインに流れている関係で、殆どの場合、右と左に担当者が別れて作業をします。右のドアを取り付ける係りが居れば、当然、左のドアを取り付ける係りが居る訳で、これを1人でするような作業は、ラインをまたぐ=事故の原因と成るからか、基本的にはありません。(ま、生産性が上がらないのが一番の原因でしょうけどね)
また、人には利き腕がありますので、利き腕では締めにくい部分にネジがあったり、ある程度ボディーが出てくるまで作業が出来なかったりと、左右どちらの担当になるかで同じ作業内容でも難易度に違いが出る事も多いです。
タクトって?
ラインにはある一定の間隔でボディーが流れてきます。自分の担当作業には作業範囲が決められていて、作業開始位置から作業終了位置(自工程)までに掛かる時間をタクトタイムと呼びます。私が居た部署では、入社時には62秒だったタクトが後に72秒になり、今度は徐々に短くなって最終的には54秒になりました。タクトが変わると時間内にこなす作業が増減しますので、その度に手順が変わったりっと結構鬱陶しいです。
事故や怪我は多いの?
製造現場ですので皆無とは言いませんが、よっぽどの事が無い限り骨折などの大怪我には至らないと思います。ただしこれは、教育期間中に口うるさく言われますが、決められた保護具を装着し、異常時にはラインを止める事を実践していれば…の話です。職場によっては(あっては成らない話ですが)ラインを止め辛い雰囲気のところもあるんですよね。
私のヒヤリとしたケースでは、作業中に治具を落としてしまい、ラインを止めずに拾おうとして体勢を崩し、もう少しで指先が台車の車輪に轢かれそうになった事がありました。ボディーが乗ってる台車ですので、轢かれれば指先は無くなってたでしょうね。その経験以降は、面倒でも必ずラインを止めるようにしました。(というか、慣れると治具を落としたりしなくなる) あと、塗装関係ではシンナーなどの有機溶剤を扱う職場もありますし、吹いた塗料が目に入っての視力低下なども聞きました。保護眼鏡もあるんですけど、曇ったりするのが鬱陶しくて着けない人も多いらしいです。
職業病には何があるの?
立ちっぱなしの作業ですので足腰の筋肉痛や関節痛は誰でも経験しますのでここでは除外して…
一番多いのは指の腱鞘炎、いわゆる「バネ指」です。インパクトレンチや塗装の静電ガン、シーラーの塗布ガンなど、指先でレバーを握る事によって操作する工具が殆どですので、配属先の職場ではこのバネ指については必ず説明があると思います。予防出来れば一番なのでしょうが、湯船に浸かって指の曲げ伸ばし(グーとパーを繰り返す)を毎日150回程度していても朝一番には指が動かない…事もあります。イイ顔はされないと思いますが、自分の身体は一番の資本ですので、異常を感じたらすぐに職場の上司(GL)に相談して下さい。作業制限後も好転しないなら配置転換してくれる可能性も僅かですがあります。(よっぽど悪い勤務態度で無ければ契約期間中は解雇されません)
次によく聞くのは腰痛ですかね。工程によってはしゃがみ作業や上を向いての作業になりますので、過去に痛めた経験が無くても慢性の関節痛になってしまう人も居るようです。サポーターなどの装着でかなり予防/緩和されるようなので、現場に配属されて必要だと思ったら早めに手配するのがイイと思います。
あとは長い間工具を握りっぱなしで指先の感覚が慢性的に無くなったり、油脂にかぶれたりなど、職場によって色んな話を聞きますが、結局我慢するしか無いってのが殆どの人の結論みたいです。
そうそう、全ての症状にいえますが、職場への相談無しに職業上の疾患で町医者に掛かるとのちのちかなり面倒な事になりますのでご注意を。
トイレ
一回の作業単位が2時間と比較的長いですから、トイレの問題はかなり切実です。作業でかなり汗をかく→休憩時間に水分を過補給→トイレが近くなるor腹を下すの悪循環にはまってしまうと相当辛いものがあります。基本的には休憩時間にトイレを済ませておくことで対処出来ますが、「こりゃもうやばいぜ!」っとなれば手遅れになる前に呼び出しボタンを押して職制さんに作業を代わってもらって下さい。イイ顔はされませんが、注意力散漫で不良品を流してしまうよりは数倍マシですし、集中力を欠いた状態での作業は怪我の原因にもなりかねませんので、ちゃんとトイレには行かせて貰えます。(勝手に持ち場を離れる事は出来ませんし、職制さんの都合もありますので、ギリギリまで我慢せず、なるべく早めに申し出る事をお勧めします。)